英国 シリング貨 British Shillings





エドワード6世 1547〜53年 S2482
Edward VI Hammered Shilling

直径約32mm 約6g


シリング銀貨は約500年も前のヘンリー7世のテストーンから始まりました。このエドワード6世のシリング貨は、人力によるハンマードコインなので、造りがあまり良くありません。また、肖像や銘文などがハッキリと打刻されていて、キズなどの欠点のないものは稀少です。現存するコインの平均的なコンディションは F〜VF ですが、写真のコインは EF に近いコンディションです。




エリザベス1世 1558〜1603年 S2592
Elizabeth I Hammered Shilling

直径約29.2mm 約6g


今から400年以上も前に造られたコインです。写真のコインはスクリュープレス機で造られたミルドコインですが、大きさには3タイプあって、ラージ (31mm以上)、メディアム (30〜31mm)、スモール (30mm以下) が存在し、直径の大きいものほど稀少となっています。写真のコインはスモールサイズですが、コンディションは EF です。国内はもとより、海外でも人気の高いコインの1枚です。




ジェームズ1世 1603〜25年 S2668
James I Hammered Shilling

直径約30mm 約6g


ジェームズ1世のコインも人力による打製で造られましたので、製造されたコインはあまり出来が良くありません。したがって、デザインの細部までハッキリと打刻されたものや、形状が真円に近いものの現存数は多くありません。写真のシリング貨は、ほぼ真円に近く、デザインや銘文などが鮮明に打刻された数少ないものの1枚といえます。このコインのコンディションで EF です。




チャールズ1世 1625〜49年 S2787
Charles I Hammered Shilling

直径約30mm 約6g


チャールズ1世のコインは、シリング貨にかかわらず数多くのコインが発行されています。治世後半にはピューリタン革命が起こり、その戦費調達のためにあらゆる造幣所でコインが造られたからです。そのため粗悪な造りのものも多いのですが、革命期の時代背景を今に伝える「歴史の生き証人」ともいえるコインです。 写真のコインは、一番入手の容易なタワーミントで、コンディションは VF です。




コモンウェールス 1649〜60 1651年 ESC983
The Commonwealth Hammered Shilling

直径約31mm 約6g


1649年ピューリタン革命によってチャールズ1世が処刑され、共和制が成立しました。そのため、この共和制下で発行されたコインには国王の肖像がありません。このシリング貨の表面にはミントマーク (写真左12時の位置) が打たれています。写真は太陽 (Sun) ですが、錨 (Anchor) のミントもあって、こちらの方はたいへんな稀少ミントとなっています。写真のコインのコンディションは VF+ (good VF) です。




クロムウェル 1658年 ESC1005
Oliver Cromwell Shilling

直径約27.5mm 約6g


共和制が宣言された4年後の、1653年に護国卿に就任したオリヴァー・クロムウェルでしたが、 その5年後の1658年に彼自身が死去したため、独裁的指導者を失った共和制は2年後に崩壊、 王制復古となりました。クロムウェルのシリング貨はパターン (試作貨) とも言われていますが、 現存数が多いため入手は比較的容易です。このコインはスクリュープレス機で製作されたため、 以前のコインに比べ格段に造りが良くなっています。




チャールズ2世 1668年 ESC1030
Charles II Shilling

直径約25.5mm 約6g


1660年、王制復古により亡命先のフランスから呼び戻されて王位に就いたチャールズ2世ですが、最初に発行されたシリング貨は、人力によるハンマードコインでした。写真のコインはミルドコインですが、このコインにはバラエティが多く、肖像の下にエレファント (象) や、プルーム (羽根飾り)、エレファント&キャッスル (象と城) などがあります。チャールズ2世の中では写真のコインが 一番入手しやすいタイプです。




ジェームズ2世 1687年 ESC1072A
James II Shilling

直径約25mm 約6g


ジェームズ2世は、旧教の復活や常備軍の設置などをめぐって議会と対立し、1688年名誉革命で王位を追われてフランスに亡命しました。そのためほぼ4年間と在位が短く、シリング貨の現存数も多くありません。現存するコンディションは F〜VF がほとんどで、それ以上のコンディションのものは稀少です。写真のコインはほとんど欠点のないもので、EF+ (good EF) のコンディションです。




ウィリアム&メアリ 1688〜94 1693年 ESC1076A
William&Mary Shilling

直径約25mm 約6g


夫であるウィリアム3世とともに、女王メアリが王位に就き共同統治が始まりました。シリング貨の発行はわずか2年間と短く、コンディションの良いものは多くありません。VF 以下が平均的なコンディションで、EF 以上はレアーコンディションといって良いでしょう。このコインは1693年の年号の9 (右の写真中央寄り8時の位置) が0の上に打たれたオーバーデイトですが、この写真でわかるでしょうか。




ウィリアム3世 1694〜1702年 1700年 ESC1121
William III Shilling

直径約25.5mm 約6g


1694年、女王メアリの死去によりウィリアム3世の単独統治となりました。発行されたシリング貨の中で一番入手しやすいのは写真の1700年銘ですが、この年銘であればほぼ完全に近いUNC(未使用)のものも比較的安価で入手が可能です。また肖像の下に鋳造地を表す頭文字があるものなどもありますが、入手はかなり難しいでしょう。写真はトーンの美しい UNC のコインです。




アン女王 1702〜14年 1703年VIGO ESC1131
Anne VIGO Shilling Before Union

直径約26mm 約6g


アン女王の治世期間中の出来事と言えば、スペインの「ヴィーゴ湾の海戦」や、イングランドとスコットランドが連合し「グレート・ブリテン連合王国」が成立したことなどでしょう。写真のコインは連合前にヴィーゴ湾の海戦で、フランスやスペインの商船隊から奪取した銀で製造された有名な「VIGO」銘入りです。EFクラス以下のコンディションであれば、入手はそんなに難しいコインではありません。




アン女王 1702〜14年 1708年 ESC1147 連合後
Anne Shilling After Union

直径約26mm 約6g


アン女王のシリング貨の肖像は4タイプが発行されています。しかしその4タイプとも肖像に大きな違いがあるわけではないので、これら全てを収集する必要はないでしょう。写真のコインは連合後の1708年に発行された第3肖像ですが、この年号はコンディションの良い UNC クラスが一番多く残っています。連合後のコインの特徴は、別個だったイングランドとスコットランドの紋章が組み合わされて一体になったことです。




アン女王 1702〜14年 1709年 ESC1154 連合後
Anne Shilling After Union

直径約26mm 約6g


このコインも前項と同じ第3肖像ですが、よく見ると肖像の雰囲気や、表面の銘文の位置、銘文の文字などに違いがあることが解ります。前頁のコインの文字は新しい文字 (New Script) ですが、このコインは年号が新しいにもかかわらず、古い文字 (Old Script) が使われています。アン女王のシリング貨は、裏面の4つの紋章の間に「羽根飾り」「バラと羽根飾り」の入ったものも発行されています。




ジョージ1世 1714〜27年 1723年SSC ESC1176
George I Shilling SSC Type-1

直径約26mm 約6g


ジョージ1世はドイツからやってきて英国王に即位し、ハノーヴァー王家の初代国王となりました。当然のことながら、ドイツ人であるジョージ1世は英語のまったく解せない国王だったわけですが、英国民の評判はあまりかんばしくなかったようです。シリング貨は2タイプの肖像が発行されていますが、この第1肖像 (サウス・シー・カンパニー) タイプが一番入手し易く、UNCコンディションでも難しくはありません。




ジョージ1世 1714〜27年 1723年SSC ESC1178
George I Shilling SSC Type-2

直径約26mm 約6g


この第2肖像は前項の第1肖像と比べると、肖像の大きさが多少小さくなったのと、鼻先が少しとがった感じに変更されました。この第2肖像はコンディションの良いコインが少なく、現存するほとんどのコインが F〜VF で、EF 以上のものはレアーコンディションと言って良いでしょう。また、肖像の下にWCC (Welsh Copper Company) の頭文字が入ったタイプなどもありますが、現在では稀少品となっています。




ジョージ2世 1727〜60年 1734年 ESC1197
George II Young Bust Shilling (Roses&Plumes)

直径約26mm 約6g


ジョージ2世のヤングタイプのシリング貨は、全般的にコンディションがあまり良くありません。一般に販売されているのは VF 前後のコンディションのものが圧倒的に多く、それ以上のコンディションは稀少と言えます。特に UNC クラスは滅多にお目にかかることが出来ません。このコインの裏面はバラと羽根飾り (Roses&Plumes)で、この程度 (Good VF) のコンディションであれば入手は簡単です。




ジョージ2世 1727〜60年 1739年 ESC1201
George II Young Bust Shilling (Roses)

直径約26mm 約6g


写真のコインのコンディションは VF ですが、この程度のものであれば入手は意外に簡単です。この裏面のバラエティがバラ (Roses) のコインは、ジョージ2世のヤングバストとしては最も入手のし易いタイプです。このコインもコンディションの良いものは少なく、EF以上のコインを入手するには時間がかかると思います。特にコンディションが UNC (未使用) のものは稀少です。




ジョージ2世 1727〜60年 1745年 ESC1205
George II Old Bust Shilling (LIMA)

直径約26mm 約6g


ヤングバストに変わって1743年から発行されたオールドバストです。このコインはスペインから奪った南米産の銀で造ったため、肖像の下にそれを示すべく「LIMA」の銘が入れられました。ヤングバストに比べれば、はるかにコンディションの良いコインが多く残っています。EF以上のコインも入手は難しくありませんし、歴史的な背景を持つコインでありながら、比較的安価で購入が可能なコインの1枚と言えます。




ジョージ2世 1727〜60年 1746年 Proof ESC1208
George II Old Bust Proof Shilling

直径約26mm 約6g


英国コインのコレクターがプルーフ貨を収集するのは、このジョージ2世のオールドバストからを対象とするのが一般的です。これ以前にもプルーフ貨は造られていますが、あまりにも希少性が高いため、簡単に入手出来る存在ではありません。このプルーフ貨が造られた1746年はジョージ2世が即位してちょうど20年目にあたるところから、その記念的な発行だったのではないかと思われます。




ジョージ2世 1727〜60年 1747年 ESC1209
George II Old Bust Shilling (Roses)

直径約26mm 約6g


裏面にローズを配したバラエティで、EF までのコンディションであれば入手は容易です。ジョージ2世のオールドバストはプルーフ貨を除き特別に入手の難しいものはありません。このコインのコンディションはほぼ EF で、ここまでの状態であればそんなに苦労はしないで入手出来ると思います。これまで説明したいずれのコインも、なるべく整った円形で、銘文やデザインなどがハッキリ打刻されたものの入手をお勧めします。




ジョージ3世 1760〜1820年 1763年 ESC1214
George III Northumberland Shilling (Type A)

直径約26mm 約6g


ジョージ3世のシリング貨は、3種類が発行されています。最初に発行されたこのタイプAのシリング貨は、ノーサンバーランド・シリングと呼ばれ『アイルランド総督に任命されたノーサンバーランド卿が、そのお祝いに、重量48ポンド分の銀を使いこのシリング貨を造らせ、召使いや、側近、友人達に配った』と言われています。英国のシリング貨の中では、名品中の名品と言って良い1枚です。




ジョージ3世 1787年 ESC1241 プルーフ貨
George III Shilling (Type B)

直径約26mm 約6g


ジョージ3世の2番目に発行された中年像です。裏面のハノーヴァーの紋章 (9時の位置) の中の、立ち姿のライオンのまわりにハートがあるものとないものがありますが、どちらが稀少ということはありません。このコインはハートのあるプルーフ貨ですが、国内でこのプルーフ貨が販売されることはそんなにありません。通常貨であれば、EF までのコンディションのものは入手は容易です。




ジョージ3世 1820年 ESC1237 プルーフ貨
George III Shilling (Type C)

直径約23.6mm 約5.655g


英王立造幣局では1816年から、蒸気機関によるプレス機でコインが大量に製造されるようになりました。大量生産の記念すべき1枚であるこのシリング貨は、1816年から1820年まで製造されましたが、写真のコインは、1820年のプルーフ貨ですが、裏面のガーター紋章の素晴らしいデザインと、優れた造りのコインです。




ジョージ4世 1821年 ESC1248 プルーフ貨
George IV Garnished Shield Type Shilling

直径約23.6mm 約5.655g


躍動感溢れるジョージ4世の肖像と、最も美しい紋章と言われているガーニッシュドシールドの組み合わせが、高い人気を誇っているシリング貨です。写真のコインは1821年発行のプルーフ貨ですが、レアリティ (稀少度) が R3 と高い割には、入手が極端に難しいコインではありません。また、通常貨の方は、EF までであれば容易ですが、UNCクラスは現存数が少ないので入手には多少時間がかかると思います。




ジョージ4世 1825年 ESC1253
George IV Garter Type Shilling

直径約23.6mm 約5.655g


2番目に発行されたジョージ4世のシリング貨です。表面の肖像に変更はありませんでしたが、裏面の紋章だけが、全く違ったガーター・タイプに変更されました。ジョージ4世のシリング貨の中では、このガーター・タイプが一番入手が難しく、特に通常貨の UNC クラスのものは、国内ではなかなか入手ができません。また、プルーフ貨も全て稀少度が R4 以上と、これまた入手の難しいコインとなっています。




ジョージ4世 1826年 ESC1258 プルーフ貨
George IV Lion Type Shilling

直径約23.6mm 約5.655g


ジョージ4世最後の発行となったシリング貨です。表面は月桂冠ヘッドから無冠ヘッドの肖像に変わり、裏面は王冠の上にライオンが乗ったデザインに変更されました。このライオンのデザインから、通称『ライオン・シリング』と呼ばれています。写真はセットで発行されたプルーフ貨ですが、ジョージ4世のプルーフ・シリング貨の中では一番入手が簡単です。通常貨も UNC クラスでなければ、入手は難しくありません。




ウィリアム4世 1831年 ESC1266 プルーフ貨
William IV Shilling

直径約23.6mm 約5.655g


このウィリアム4世のシリング貨から、裏面のデザインが一新されました。上部に王冠を配し、まわりにはリース、中央に『ONE SHILLING』と英文で額面が入りました。この裏面のデザインは、次のヴィクトリア女王のヤング・ヘッドでも使われています。通常貨では、やはり UNC クラスの入手に手間取りますが、EF までのコンディションであれば、そんなに難しくありません。写真は、セットで発行された、プルーフ貨です。




ヴィクトリア女王 1839年 ESC1282 プルーフ貨
Victoria Young Head Type Shilling

直径約23.6mm 約5.655g


ヴィクトリア女王のヤング・ヘッド タイプは、約50年の長期に渡り発行されています。その間、肖像が極僅かに違うものが7種類発行されていますが、全てを収集する必要はなく、どれか1枚あれば良いでしょう。ヴィクトリア女王が即位した18才前後の愛らしい肖像が人気のコインです。年号に拘らなければ通常貨でもプルーフ貨でも、UNC クラスの入手はそれほど難しくありません。




ヴィクトリア女王 1887年 ESC1352 プルーフ貨
Victoria Jubilee Type (Small Bust) Shilling

直径約23.6mm 約5.655g


ヴィクトリア女王のシリング貨の中では一番入手が簡単な、ジュビリータイプのスモール・バストです。通常貨も、プルーフ貨も価格が手ごろで、特にプルーフ貨は発行枚数が1,084枚と多くありませんが、トーンの美しいものがまだ残っています。




ヴィクトリア女王 1889年 ESC1356 プルーフ貨
Victoria Jubilee Type (Large Bust) Shilling

直径約23.6mm 約5.655g


スモール・バストを、大きい肖像にモディファイしたラージ・バストです。スモールより入手が難しくプルーフ貨は、国内では勿論、海外でもほとんど販売されたことはありません。プルーフ貨は ESCカタログでの稀少度が R3 となっています。ですが市場に出てくる頻度から推測すると実際には R4 以上の稀少度ではないかと考えられます。



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