古代ギリシャ Ancient Greek





トラキア・テトラドラクマ銀貨ペルガモン・ミント BC305-281年
Thrace Tetradrachm

直径約27mm 約17.0g


このコインは、BC305〜281年に、当時のトラキア王国 (現在のブルガリア付近) を治めていたリシマコスが発行しました。表の肖像はアレクサンドロス大王で、彼が生前エジプトで神の子と認められたことから、エジプトの神であるアモン神の象徴である羊の角を頭につけています。当時は実在する人間の肖像をコインに描くことは禁じられていましたので、このように大王を神格化してコインに登場させました。裏面には中央に戦争の女神アテナが坐像で描かれ、その手の上で勝利の女神ニケが羽ばたいています。鋳造地のミントマークは裏面に刻印されており、それはデザイン化された文字 (モノグラム) や具象的な模様 (三日月など) の組み合わせによって表現されています。こちらのペルガモンミントでは、人形と星のようなマークがあります。なお、このミントだけの特徴として表の肖像の下に、Kの文字があります。ほかの為政者もアレクサンドロス大王の肖像のコインを発行しましたが、これほど多くのミントで異なる肖像のコインを発行したのはリシマコスだけです。大王の後継者としてマケドニアの王になりたいという彼の熱い思いが伝わってきます。




トラキア・テトラドラクマ銀貨ペラ・ミント BC305-281年
Thrace Tetradrachm

直径約29mm 約16.9g


ペラは、現在のギリシャ北部に位置します。羊の角が耳の下まで長く伸びており、大王の肖像が他のコインと違った雰囲気になっています。コインの裏面にある2つのモノグラムの組み合わせがミントを表しています。




トラキア・テトラドラクマ銀貨アンフィポリス・ミント BC305-281年
Thrace Tetradrachm

直径約30mm 約17.2g


アンフィポリスは、現在のギリシャ北東部に位置し、このコインの中心的なミントでした。できばえの良いものが多く、バランスのとれた大王の肖像です。裏面のミントマークはハチとトーチ (火をつける道具) の組み合わせです。




トラキア・テトラドラクマ銀貨アレクサンドリア・トロイアヌス・ミント BC305-281年
Thrace Tetradrachm

直径約27mm 約16.9g


アレクサンドリア・トロイアスは、現在のトルコ北西部に位置します。今回のコインの中では一番直径が小さく、そのため肖像に厚みがありハイレリーフになっています。ミントマークは2つのモノグラムの組み合わせです。




トラキア・テトラドラクマ銀貨マグネシア・ミント BC305-281年
Thrace Tetradrachm

直径約28mm 約16.7g


マグネシアは、現在のトルコ西部に位置しています。羊の角が比較的小さく描かれており、ミントマークはモノグラムとトーチの組み合わせです。




トラキア・テトラドラクマ銀貨ビザンティオン・ミント BC305-281年
Thrace Tetradrachm

直径約36mm 約16.7g


ビザンティオンは、現在のトルコのイスタンブールに当たります。今回のコインの中では最も直径が大きく、薄い平金に刻印されています。大王の肖像や女神アテナの描き方がほかのミントとは違い独特です。ミントマークはモノグラムが1つと、下にはトライデント (三つ又のほこ) があります。




トラキア・テトラドラクマ銀貨ランプサコス・ミント BC305-281年
Thrace Tetradrachm

直径約32mm 約16.9g


ランプサコスは現在のトルコ北西部に位置しており、このコインの中心的なミントで、芸術性の高い肖像が多く描かれました。こちらのコインもハイレリーフの肖像で羊の角も大きく立派に描かれており、大王の威厳を感じさせます。




トラキア・テトラドラクマ銀貨リシマケイア・ミント BC305-281年
Thrace Tetradrachm

直径約30mm 約16.7g


リシマケイアは、現在のトルコ北西部に位置し、これらのコインが最初に発行されたミントであるといわれています。大王の肖像はほかのミントとは違った個性的なものです。ミントマークはライオンの頭部になっています。






アテネ・テトラドラクマ銀貨 BC500-480年
Athene Tetradrachm

直径約22mm 約17.3g


初期の4ドラクマ貨はギョロ目のアテナ神と『ころん』としたふくろうが意匠され、後の代表的なアテネの4ドラクマ貨と較べると稀少で、出来もよくないが高価なコインである。写真の現品は見栄えがしないが、重量はアッテカテトラドラクマ貨の標準17.2gを満たしているので摩滅して状態が極端に劣化したというより、コインの造りが悪いのだと考える。




アテネ・オボル銀貨 BC500-480年
Athene Obol

直径約8mm 約0.55g


アテネのコインとしては初期タイプである。サイズはオボル (Obol) で、重量はドラクマ (Drachm) の 1/6、ポピュラーなテトラドラクマ (4ドラクマ) と比較すると 1/24 という小さな銀貨である。オボルの現存割合はテトラドラクマに較べて少なく、写真の初期タイプはかなり稀少である。




アテネ・テトラドラクマ銀貨 BC465-460年
Athene Tetradrachm

直径約24mm 約16.8g


ペルシャ戦争に辛くも勝利し、古代アテネはデロス同盟の盟主として最盛期を迎えることとなった。BC470-450頃はアテネコインのデザインがより大量発行に向いたかたちへと移行してゆく。写真のコインは移行期の前半のものである。表面のアテナ神そのものに大きな変化はないが、細かく観ると表情や前髪のうねりなどに違いがある。裏面は中央に首を少し傾げたふくろう、左上にオリーブの小枝、ふくろうと枝の間に三日月、右側にアテネを意味する「ΑΘΕ」の三文字が配されている。この時期のコインは稀少で、この状態で見つけるのはさらに難しい。




アテネ・テトラドラクマ銀貨 BC455-449年
Athens Tetradrachm

直径約22mm 約17.3g


重量がテトラドラクマとしてはやや軽いのは、裏面についた錆をつよく落としたためだと思われる。古代ギリシャ・ローマのコインではかなりさびた状態で見つかるのはふつうのことで、銀貨の場合はさびを落としてからコレクターの目に触れることも多い。ここでの注目は表面のアテナ神の前髪でほぼまっすぐ、裏面のふくろうは少し首を傾げており、これは移行期終盤 (BC455-449) のタイプと思われる。BC449以降はアテナの雰囲気が変わり、ふくろうの首もまっすぐになるので全体の印象も違ってくる。




アテネ・テトラドラクマ銀貨 BC449-413年
Athens Tetradrachm

直径約20mm 約15.7g


古代アテネのコインを代表するのが紀元前5世紀中頃から同後期にかけてのテトラドラクマ (4ドラクマ) 銀貨である。入手機会も多く、古代アテネのコインでまず1枚、というならこのコインからである。状態や微妙な出来栄えの違いから好みの1枚を探すのも良い。写真のコインは摩滅が少なく、黒いダークトーンが掛かった最高の状態である。




アテネ・ドラクマ銀貨 BC449-413年
Athens Drachm

直径約15mm 約4.26g


テトラドラクマの1/4サイズ、1ドラクマである。薬指のつめくらいのかわいらしい銀貨であるが、テトラドラクマとデザイン要素は同じである。写真のサンプルは特に表面のアテナ神がほぼ欠けずに刻印され、摩滅も少ない良い状態である。ドラクマそのものはそれほど珍しい訳ではないが、同時代のテトラドラクマと比較すると数分の一しか見かける機会がない。




アテネ・ヘミドラクマ銀貨 BC420-404年
Athens Hemidrachm

直径約11mm 約2.94g


ヘミドラクマ (1/2ドラクマ=3オボル) である。表面のアテナ神は横顔で他のサイズと同様であるが、裏面のふくろうは正面を向き、オリーブの葉がリースのように上方から左右に分かれ、アテネを指すギリシャ3文字も上、右下、左下と三角形に配置されているのが特徴である。




アテネ・テトラドラクマ銀貨 BC300-262年
Athens Tetradrachm

直径約22x15mm 約17g


B.C.431年にスパルタとの間で始まったペロポネソス戦争は、B.C.404年にアテネの降伏で終結した。貨幣鋳造はBC393年頃再開されたがBC338年頃マケドニアの支配により再び中断する。この期のコインは意匠的にはアテナの目が変化したほかは進歩が見られず、円形も崩れ造りは雑である。写真のコインは平金が楕円形なのがおもしろい。平金の形に委細構わず打刻しているので、ふくろうの足や尾、オリーブの枝などはかなり欠けているがこの時期のコインとしては状態を含めてかなり良いサンプルである。




アテネ・テトラドラクマ銀貨 BC136/5年
Athens Tetradrachm

直径約31mm 約16.8g


マケドニアの支配から解放されると、BC220年頃「ニュースタイル」と呼ばれる大きく薄い平金を使用したコインが造られるようになった。BC2世紀になると、平金が薄くて大きいこのタイプが多種大量に造られた。表面のアテネ神の表情はぐっと人らしくなり、ヘルメットの意匠も全く変わった。裏面も大きく変化し、ふくろうはアンフォラ (両側取手つき陶器) の上にとまっているのが特徴である。




アテネ・テトラドラクマ銀貨 BC136/5年
Athens Tetradrachm

直径約30mm 約16.9g


紀元前2世紀に造られたニュースタイルと呼ばれるテトラドラクマです。ニュースタイルの裏面は豊富なバラエティがあり、ふくろうの脇には様々な意匠が刻まれている。先程のニュースタイルでは「錨と星」、この写真の品には「伏せた右向きのライオン」が描かれている。書かれた文字の違い、平金の形や大きさの違い等と併せて、ニュースタイルのアテネコインを集めるには楽しいバラエティですが、おそらくキリがないほど多くの種類がある。






ルカニア・ディスターテル銀貨 BC400-350年
Lucania Distater

直径約25mm 約15.52g


現在のイタリア南部である、ルカニアのツリオイで作られたコインで、表面にアテナの頭像を描いている。アテナはギリシャ神話で智恵や戦争の女神とされ、非常に多くのコインに描かれている。常にヘルメットを被っており、このヘルメットのデザインにはさまざまなバラエティがある。このコインでは、スキラという海の怪物 (上半身は女性で下半身は魚) が描かれている。裏面には上に牛、下に魚が描かれている。




ブルティウム・ドラクマ銀貨 BC215-205年
Bruttium Drachm

直径約20mm 約4.43g


現在のイタリア南部である、ブルティウムのロクロイ地方のコインで、表面にはニケの頭像が描かれています。ニケは勝利の女神として多くの古代ギリシャコインに登場する。背中の翼が特徴で、そのため全身像や空を飛んでいる姿で描かれることが多く、顔の表情が良く分かりません。しかし、このコインは珍しくポートレィトタイプになっている。背中の方に少し見えるのが翼です。裏面の男子像については諸説あり、特定されていません。




シラクサ・テトラドラクマ銀貨 BC485-466年
Syracuse Tetradrachm

直径約25mm 約17.15g


シチリア島のシラクサのコインで、裏面にアレトゥサの頭像を描いている。アレトゥサは正式には女神ではなく、アルテミスという女神に仕える妖精 (ニンフ) です。しかしシチリア島のシラクサでは、およそ170年以上にもわたってアレトゥサの描かれたすばらしいコインを発行し続けた。もちろんアレトゥサの表情や髪型などの細部のデザインは多種多様に変化したが、基本的なモチーフは同じでした。この初期タイプのコインでは、アレトゥサの表情ははっきり描かれていませんが、顔のまわりを4匹のイルカが回転するように泳いでいる様子は、躍動感や生命感があり、良いデザインだと思います。表面にはカドリガ (馬4頭の戦車) が描かれている。こちらはあまり動きがなく、「歩くカドリガ」などと呼ばれている。




シラクサ・テトラドラクマ銀貨 BC317-289年
Syracuse Tetradrachm

直径約24mm 約16.91g


シチリア島のシラクサのコインで、1つ前のコインと同様表面にアレトゥサの頭像を描いている。1つ前のコインの約170年後に発行されたもので、両面ともにモチーフは全く同じですが、表現方法が異なります。非常に写実的な彫刻となり、カドリガも躍動感がある。アレトゥサの顔のまわりを泳ぐイルカの配置も変わりました。なお前期のコインはカドリガの面が貨幣の表でしたが、後期はアレトゥサの面が表となります。




シラクサ・テトラドラクマ銀貨 BC317-289年
Syracuse Tetradrachm

直径約25mm 約17.16g


シチリア島のシラクサのコインで、表面にペルセポネの頭像を描いている。ペルセポネは、ギリシャ神話では女神デメテルの娘とされてる。そしてデメテルが大地の女神であるのに対して、冥界の女神と言われている。この肖像で印象的なのは、ペルセポネのほほに張りがあって、非常に若々しい表情に彫刻されていることです。裏面は勝利の女神ニケの全身像です。




カルタゴ領シチリア・テトラドラクマ銀貨 BC350-325年
Carthaginian Sicily Tetrarachm

直径約26mm 約17.19g


シチリア島のカルタゴ領で発行されたコインで、表面にタニットの頭像を描いている。カルタゴはフェニキア人によってBC800年頃に建設され、その後ギリシャのシチリア島に進出して植民地を作った。このコインはその植民地発行であるため、カルタゴの守護神であるタニットの表情もギリシャ風のものになっています。肖像の周りには4匹のイルカが泳いでいますが、その配置と大きさのバランスが絶妙です。裏面にはカルタゴのコインの特徴である馬とヤシの木が描かれている。馬の下にあるのはフェニキア文字です。




マグネシア・テトラドラクマ銀貨 BC2世紀頃
Magnesia Tetradrachm

直径約33mm 約16.76g


現在のトルコのイズミール付近である、イオニア地方のマグネシアで発行されたコインで、表面にアルテミスの頭像を描いている。アルテミスは月や狩猟に関する女神とされ、多くのギリシャコインに登場する。背中に見えるのが弓と矢筒です。裏面にはギリシャ神話でアルテミスの兄とされているアポロが描かれている。




スミルナ・テトラドラクマ銀貨 BC2世紀頃
Smyrna Tetradrachm

直径約34mm 約16.72g


現在のトルコのイズミール付近である、イオニア地方のスミルナのコインで、表面にキュベレの頭像を描いている。キュベレは幸福や多産の女神とされている。頭の冠は城壁をイメージしており、戦時の時には都市を守る女神でもあったようです。他の女神にはない力強い感じがするのはそのためかもしれません。裏面は非常にシンプルで、貨幣発行責任者の名前などの文字が入っただけのデザインです。



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